向田邦子さんに導かれ。

7月16日(土)の日経新聞に、「ニジェール物語」原作者のフクダフデコさんのインタビュー記事が掲載されました。

ぜひ、ご一読ください。

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国土の約8割を広大なサハラ砂漠が占める西アフリカの内陸国ニジェール。

同国を支援する民間団体「コモン・ニジェール」(茨城県守谷市)の代表理事、福田英子さん(58)が、

アンカレジ国際空港のロビーで作家で脚本家の向田邦子さんと出会ったのは、

1979年春。向田さんが台湾で飛行機事故で亡くなる約2年前だ。

 

目の前にいる白いズックのバッグをたすき掛けにしている女性の横顔が「向田さんと似ているなあ」と思い、

バッグカバーに目をやると、黒字で大きく「向田」と書いてある。

「失礼ですが向田邦子さんですよね」「あら、何でわかったの」。そこから、話が始まった。

 

当時、福田さんはニジェールに赴任した鉱山会社勤務の夫に同行し、サハラ砂漠で生活をしていた。

日干しレンガの家。あたり一面は砂の大地で、360度の地平線が見える。夜は星の光が自分の影を映す。

そんな砂漠の暮らしに向田さんは「もっと知りたいから、手紙に書いて送ってよ」と興味を示した。

手紙を読んだ向田さんから「本にしてみたら。編集者を紹介するから」と勧められた。

だが、実現しないまま向田さんは亡くなった。

 

福田さんは貧困に苦しむニジェールを知ってもらい、支援しようと、2009年に「コモン・ニジェール」を立ち上げた。

「何らかのかたちで7年間過ごした砂漠での体験を書き残したい」という気持ちはずっとあった。

10年に創作寓話(ぐうわ)集として小冊子にまとめ、

今年8月に作品数を増やした「ニジェール物語」(象の森書房)として出版する。

「向田さんなしには出版はありえなかった。運命を感じます」

(シニア・エディター 大橋正也)